【続報】仮想通貨P2P口座凍結、被害確認は8人に

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WSOP参加者にも迫る「円転の落とし穴」――警察が利用者を被害者側とみた事例も

2026年6月24日

世界最大級のポーカー大会「WSOP(World Series of Poker)」が、米国ラスベガスで開催されている。2026年大会は5月26日から7月15日まで、Horseshoe Las VegasとParis Las Vegasを会場に行われる。

世界各国のプレイヤーが夢の舞台に挑む中、日本からも多くのプレイヤーが現地入りしている。

その一方で、賞金やステーキング代金などを暗号資産で精算する日本人プレイヤーにとって、看過できない問題が拡大している。

本紙が6月5日に報じた、Bybitなどの暗号資産取引プラットフォームにおけるP2P取引を経由した銀行口座凍結問題である。

記事公開後、新たな相談と情報提供が相次いだ。本紙が現在までに把握した口座凍結事案は、東京都内だけで少なくとも8人に達している。

これは、単発の送金トラブルとして片付けられる段階ではない。

複数の事案には、暗号資産P2P取引の銀行振込部分が、特殊詐欺などで得た資金の移転に悪用された可能性を示す共通点がある。

ただし、現時点で全事案が同一の犯罪グループによるものと確認されたわけではない。口座凍結を受けたこと自体が、口座名義人の犯罪関与を意味するものでもない。

本件はWSOPの運営自体に関する問題ではなく、その周辺で行われるプレイヤー間の資金精算や、日本円への換金経路をめぐる問題である。

東京都内だけで8人――複数口座が同時凍結された例も

本紙が最初に報じたのは、暗号資産のP2P取引を利用してUSDTを売却し、日本円を受け取った利用者の銀行口座が、その後凍結された事案だった。

記事公開後、本紙には同様の相談が相次いだ。

現在までに報告されている事例には、次のようなものがある。

・メガバンク口座の凍結
・ネット銀行口座の凍結
・同一名義の複数口座が同時に制限された事例
・銀行から入出金の経緯について説明を求められた事例
・警察から取引経緯の確認を受けた事例
・振り込め詐欺救済法に基づく「預金等債権の消滅手続」に進んだ事例

振り込め詐欺救済法では、犯罪利用預金口座と判断された口座について預金等債権の消滅手続が行われ、その後、詐欺被害者に対する被害回復分配金の支払い手続へ進む場合がある。

本紙が把握している8人に相互の面識はない。

現時点で確認されている共通点は、暗号資産を日本円に換える過程でP2P取引を利用し、面識のない第三者名義の銀行口座から入金を受けていたことである。

公的資料も、暗号資産を出口とする不正送金リスクの高まりを示している。警察庁の資料によれば、特殊詐欺やインターネットバンキングの不正送金において、暗号資産交換業者の金融機関口座へ資金を送らせる被害が多発したことから、警察庁と金融庁は金融機関に監視強化を求めている。

なぜWSOP参加者が巻き込まれやすいのか

ポーカー界隈では、海外大会への参加に伴い、暗号資産が次のような用途で利用されることがある。

・参加費の立替分の精算
・ステーキング代金の送金と利益分配
・プレイヤー間の貸借精算
・賞金持ち分の分配
・海外滞在費の精算
・帰国前後の資金移動

なかでもP2P取引は、利用者同士が銀行振込と暗号資産を交換するため、迅速に日本円化できる手段として利用されてきた。

しかし、この「利用者同士が直接送金する」という構造には、大きなリスクがある。

売り手が取引所上でやり取りしている相手と、実際に銀行振込を行う人物が、同一人物とは限らないからだ。

Bybit自身もP2P取引における第三者名義からの支払いを禁止しており、取引画面上の本人確認名義と銀行口座名義が一致しない場合、支払いを行わず、取引を取り消すよう案内している。

それでも、入金を受ける側が名義を十分確認せず、着金だけを見て暗号資産を送付すれば、本人が知らないまま犯罪資金の受取口座にされる可能性がある。

なお、Bybitは2026年1月、日本居住者向けの商品・サービスの提供を段階的に終了すると発表している。利用者は、自身の居住地判定と現在利用できる機能を公式通知で確認し、取得可能な取引履歴を早期に保存する必要がある。

問題の核心――第三者送金を利用した「三角型」の資金移転

本紙が取材した複数の事案で疑われているのが、第三者送金を介した、いわゆる「三角型」の資金移転である。

想定される流れは次の通りだ。

① 犯罪グループがP2P市場でUSDTの購入を申し込む

しかし、犯罪グループは自らの銀行口座から代金を支払わない。

② 特殊詐欺などの被害者に、P2P売り手の口座へ送金させる

詐欺被害者は、投資代金、返金手数料、保証金など別の名目だと信じ、指定された銀行口座へ日本円を振り込む。

③ P2P売り手が着金を確認し、USDTを送付する

売り手は、銀行に入金があったことだけを確認し、取引相手に暗号資産を引き渡す。

④ 犯罪グループが暗号資産を別のウォレットへ移す

結果として、資金は次のように移動する。

詐欺被害者の預金

事情を知らないP2P売り手の銀行口座

暗号資産に交換

犯罪グループ側のウォレット

後日、詐欺被害者が銀行や警察へ相談すると、最初に確認される入金先はP2P売り手の銀行口座である。

銀行や捜査機関から見れば、その口座は「詐欺被害金を受け取った口座」となる。

そのため、P2P売り手自身が事情を知らなかったとしても、銀行口座が凍結され、入金の経緯や暗号資産の送付先について説明を求められる事態が起きる。

警察が「犯罪に利用された被害者側」とみた事例

一方、本紙の取材では、凍結された口座の名義人が、捜査機関から犯罪グループに利用された側とみられた事例も確認している。

東京都内に住むP2P利用者は、口座凍結後、警察から取引経緯について事情を聴かれた。

本人は、詐欺被害金を受け取った口座の名義人である以上、自身が容疑者として扱われる可能性も覚悟していたという。

しかし、本人の説明によれば、捜査員はP2Pの注文履歴、チャット記録、銀行の入出金記録、暗号資産の送付履歴などを確認した上で、

「あなたも犯罪グループに利用された被害者と考えられる」

との趣旨の説明を行い、被害届の提出について案内したという。

この判断は、すべての事案に当てはまるものではない。また、口座凍結が直ちに解除されることを意味するものでもない。

それでも、取引記録を保存し、事実関係を一貫して説明できれば、本人が意図的に犯罪収益を受け取ったのではなく、資金移転に利用された側であることを裏付けられる可能性がある。

最大の防御策は「証拠保全」である

銀行口座が凍結された場合、最も避けるべきなのは、焦って履歴を削除したり、説明内容を変えたりすることである。

口座凍結や警察からの連絡を受けた場合は、少なくとも次の資料を直ちに保存すべきだ。

・P2Pの注文番号と取引日時
・暗号資産取引所の取引履歴
・P2Pチャットの全履歴
・相手方のアカウント名と本人確認表示
・実際に振り込んだ人物の銀行口座名義
・銀行の入出金明細
・暗号資産の送付先アドレス
・トランザクションハッシュ
・取引所や銀行から届いたメール
・賞金、ステーキング代金など資金原資を説明する資料
・当時の渡航記録と滞在日程

スクリーンショットだけではなく、可能であればCSV、PDF、メール原本など、加工されていないデータも保存する必要がある。

また、取引相手から「別の口座へ返金してほしい」「暗号資産を送り直してほしい」などと要求されても、自己判断で応じるべきではない。

まず銀行、警察、取引所に連絡し、必要に応じて金融犯罪や暗号資産案件に詳しい弁護士へ相談することが重要である。

WSOP参加者への緊急注意喚起

本紙が把握した口座凍結事案は、6月24日時点で少なくとも8人に達している。

これは氷山の一角である可能性がある。

特に、現在ラスベガスに滞在しているプレイヤーや、WSOP終了後に賞金、ステーキング利益、預かり金などを日本へ移動する予定のプレイヤーは、十分な注意が必要だ。

P2P取引を利用する場合、少なくとも次の点を徹底すべきである。

・注文相手の本人確認名義と振込名義を照合する
・第三者名義からの入金を受け入れない
・複数名義、分割入金、過不足のある入金を警戒する
・取引所外の連絡手段へ誘導されても応じない
・入金名義が一致しなければ暗号資産を解放しない
・取引完了後も履歴を削除しない
・高額取引ではP2Pを安易に利用しない

日本円への換金に当たっては、金融庁・財務局への登録状況を確認し、利用可能な登録暗号資産交換業者の取扱通貨や送金条件を調べた上で、法令と利用規約に沿った経路を選ぶ必要がある。

多額の賞金を獲得しても、帰国後に主要な銀行口座が凍結されれば、給与の受け取り、家賃、カード決済、納税、事業資金の移動など、日常生活と事業活動に深刻な影響が及ぶ。

便利さだけで、資金移動の経路を選んではならない。

重要なのは、誰から入金されたのか、その人物と取引所上の取引相手が一致しているのか、そして後日すべての経緯を客観的な記録で説明できるかである。

本紙は今後も、暗号資産P2P市場を悪用した犯罪収益移転の実態、銀行口座凍結の判断、捜査機関の対応、被害者救済の動向について継続的に取材する。

【情報提供募集】

本紙では、暗号資産P2P取引に関連する以下の情報提供を募集している。

・銀行口座の凍結
・銀行からの取引照会
・警察による事情確認
・預金等債権の消滅手続
・被害届の提出
・凍結口座の解除
・P2P取引相手からの第三者名義入金

同様の事案を経験した方は、取引所名、発生時期、金融機関名、取引金額、現在の対応状況を添えて情報をお寄せいただきたい。

※口座凍結を受けた事実だけをもって、口座名義人が犯罪に関与したと判断することはできない。本稿の被害人数と事例は、本紙が2026年6月24日までに把握した取材情報に基づく。

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